ドッペルゲンガーの足跡

ドッペルゲンガーについての
調査報告
1 コインを手にした者と同じ姿でヤツは現れる。
2 ヤツは自分の理想、欲望、闇が具現化した者。
3 ヤツはあなたの居場所を奪いに来る。
4 ヤツに居場所を奪われるとあなたは消える。
5 ヤツと逃げずに向き合わなければならない。
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これまでのMr-.DォPpペルGぇNガ-

1章 救済者-2

病室で布団をかぶって、Twitterの検索欄に『足立区 殺人事件』と入力した。
出てきたのは1988年の凶悪事件や、1999年に起きた未解決事件の情報ばかり。
ついさっき自分が目撃した公園の事件について触れているニュースもなく、つぶやきも見当たらない。

(まだ報道されていないのか……)

検索結果をスクロールして見ていると、ダイレクトメールの欄に新規メッセージを知らせる青い印がついた。
タップして開くと、クラスメイトの青山からだった。

『なんか良哉のフォロワー増えてない?』
確かにまた少し増えている。
可愛い女の子らしき人、鍵アカウントの人、ゆるふわ系のアイコンの人、1000人以上フォロワーがいる人、名前が絵文字だけの人……。
誰もかれもが怪しく見えてくる。

現時点で11人だ。
一般的に見れば多くはないが、元々青山とノリで登録した独り言用の捨てアカウント。
結局ほとんど使っておらず、そんなアカウントに他人が興味を持つとは思えない。
青山にどう返信すべきか、表示された吹き出しを見つめて悩む。
一分ほど考えて『だよね』と返した。

『可愛い子多くてずるい』
俺の深刻さに反して呑気なメッセージが届く。

可愛い子が多い、というのは少し前に俺をフォローしてくれたアイドルの子たちも含んでいるのだろう。
浮かれてフォローを返していたが、よく考えれてみれば、どうして俺なんかをフォローしてくれたのか……
タップしてプロフィールを見ていると、彼女たちのグループ名が目に入った。

『Mr-.DォPpぺルGぇNガ-』

文字化けのような名前だが、そのまま読むなら……
「ドッペル……ゲンガー?」
想像以上に怪しげな名前に、不安がモヤモヤと大きくなる。
誰かに相談して吐き出したい。でも、青山にどこまで話すべきか。事件を目撃して逃げたことを言えば、俺が疑われてしまわないか……。
しばらく考え、病室に誰もいないのを確認してから文字を打った。

『誰にも言わないでほしいんだけど。
実はさっき公園でヤバイ事件を目撃して、とっさに逃げたんだ。
その後から急にフォロワーが増えてて怖い』

文字を打つごとに鼓動が早くなる。
一呼吸おいて送信ボタンを押し、返信が来るのをじっと待った。なかなか返事がない。
3分後に画面に吹き出しが現れた。

『マジか。それ誰かに言った?』
『お前にしか言ってない。どうしよう』
『あんまり下手なことせずに警察に行った方がいいよ。
フォロワーの件はちょっと俺が調べてみるわ』

そう言ってしばらく、通知は来なくなった。
そわそわする心を落ち着けるように、俺はスマホを伏せて病室のテレビをつけた。
明るいセットに座ったタレントの元気な声が響く。音楽番組のようだ。

「続いては、人気上昇中のマリンさん!会場からライブ中継をお届けします!」

そうだった。今日は何もなければ、マリンのライブの日だった。
マリンは俺が昔から推していたマイナーなアイドルで、最近ブレイクして人気者になり始めている。

「みんな~、おひさしぶり~!! 元気してた~!?今日もみんなで最高の夜にしようね~!!」
会場中からマリンを呼ぶ声がこだまする。会場の熱気がさらに高まる。
その直後、音がはじけた。

(やっぱり、すごい……)

マリンが躍る。ステージをかける。けれど歌声はぶれない。
圧倒的なパフォーマンスに目を奪われる。上手に客をいじり、場を盛り上げていく。

「みんな~! まだまだ行くよ~! ついて来てよね~!!」
「おー!!」

ファンが大きな声で答える。
あれだけのパフォーマンスをしても、マリンはずっと笑顔を絶やさなかった。
圧倒的なパフォーマンスに目を奪われ続け、曲はあっという間に終わってしまった。

(マリン、デビュー当時はもっと人見知りだったのに。
急にトークもダンスも上手くなって、遠い人になっちゃったな……)
すっかりマリンのことで頭がいっぱいになっていると、スマホが震えた。
現実に引き戻され、慌てて画面を確認する。

『良哉のフォロワーの人、みんなアイドルファンっぽいね』
『そっか。危ない人たちではなさそう?』
『わからんけど』
『メンバーの子が俺をフォローしてくれたから、関係者だと思ってフォローしたのかな』
『そもそもなんでアイドルがお前をフォローしてるわけ?』
『それだよな……』

数分後、メッセージにツイートのスクリーンショット画像が送られてきた。
『あと、こんなの見つけたんだけど。なんか怪しくない?』
送られてきたスクリーンショットは、アイドルグループの公式Twitterによるシークレットライブの告知だった。

ツイートには謎の画像が添付されている。
『URLがついてる。これも何か関係あるのかな』
青山が言っているのは、公式のツイートに記載されたURLのことだった。
自分のTwitterからアクセスしてURLを開いてみると、チケット販売サイトに飛んだ。
鍵がかかっていてそれ以上は進めない。

ツイートには『PASS = A を英語に正せ(8文字)』と書かれている。
謎を解いた人だけが参加できるライブということか。
……確かに怪しい、かも。
そういう類のプロモーションかもしれないし、何か関係があるのかもしれない。
パスワードがわからなければ調べようがない。

ツイートに添付されたシンプルな画像に戻って考えてみた。
手がかりはこの画像だけか。水色、黒、黄色、紫……これだけじゃ何もわからない。
色に関係するものなんてあったっけ?

いや、待てよ。そもそも、これが俺をおびき寄せる罠かもしれない……?
鍵のかかったサイトと画像を交互ににらめっこしていると、メッセージが届いた。

『俺、この暗号わかったわ。
家が近いし、ライブに行ってくるよ。何か見つけたら報告する』

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